初歩の炭焼き講座 第6部

6部 炭焼き作業の実際

炭焼きは教科書のマニュアル通りにはいかない事が沢山ありますが、手順を追って話します。

 

(1) 炭窯の設置 

設置場所は火の気の安全な場所だけでなく、煙が長時間出る為に、近所に民家が無いか又は理解の有る方である事が必要で、この条件がクリア出来ないと継続使用することが困難となります。

A.炭窯には屋根が必要です。炭窯は温度を保つために周囲を砂もしくは真砂土で覆います。雨で濡れると焼けたドラム缶の寿命が極端に短くなり、火を入れた時、窯の温度上昇にも時間が掛ります。

B.ドラム缶の左右と後ろをブロックで囲みます。

A.で述べたように窯の周囲に真砂土を入れますので各ブロックの穴に80㌢位の鉄筋を通しブロックを地面に固定させます。

 

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前面は火口を中心にしてまず焚口を組み、煉瓦を互い違いに組み合わせて前面を覆います。

ドラム缶と煉瓦の隙間には真砂土を詰めて置きます。(赤土は焼けると固まり密閉性がない。)

 

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ドラム缶には注入口と換気孔(小栓)の穴が有りますが、注入口は火口(ほぐち)として取り除きます。

小栓は不要な穴なので栓を抜き去り粘土などで潰します。(栓は熱で簡単に溶けてしまい、ほっておくと密閉した後に此処から空気が入って肝心の炭が灰になる事が有ります。)

 

2) 炭材の用意 (ここではドラム缶窯による竹炭に限って記述します。)

A.炭にする竹は、孟宗(もうそう)竹(ちく)・真竹(まだけ)が適当です。孟宗竹は太くて肉が厚く、食用になりどこでも手に入る竹です。

  真竹はタケノコが孟宗竹より1か月近く遅く生えてきて、50㌢以上に伸びたタケノコを食べますが、根元から先まで柔らかでおいしい食用竹です。

  節間が長くてまっすぐに伸びる性質が有り、肉厚は孟宗よりやや薄いのが特徴です。

B.炭材にするのは何れの竹も3~5年経った竹が良く、切る時期も大切です。

  竹は冬場から春先までの寒い時期に切ったものがよく、春以降の成長期に切った竹には虫が入って、数か月放置すると竹はグサグサの虫食いになり炭に使えなくなります。但し、切って直ぐに焼けば虫の影響が少なく使用は可能です。竹を切るのは手鋸でも切れますが、チェンソーの使用をお勧めします。なお、安全に使える様に日頃訓練する事が絶対条件です。

C.竹を切り出したら、根元から3㍍くらいの長さに切り、運びやすくします。先の方で径が細くなるところは使いにくいので外します。

  炭窯のサイズ(内寸85㌢)の半分の40㌢に切り揃えます。この40㌢の丸竹を鉈(なた)で割って幅3㌢~4㌢の短冊にします。

  (肉厚の竹は細目の3㌢に、薄い竹は4㌢位に)竹の節は鉈で落して平たくします。この作業は手間も時間も掛かりますが、手抜きをするときれいな炭になりません。又、竹を割る鉈は重い鉈が効率的です。竹を割る丸型の道具が有りますが、何の役にも立ちませんので買わないように。(これは細い竹を割る道具で孟宗には使えません。)

D.切り揃えた短冊形の竹は一旦乾燥させるのがベターです。

  生のままでも炭になりますが、1ケ月以上乾燥させると炭焼き時間が若干短縮できます。但し、夏場に切った竹は早く焼きに掛からないと虫の発生できれいな炭にはなりません。なので夏場(7~9月)の炭焼きはこれまた暑くて大変で、お勧めできません。

 

3) 竹炭材を炭窯に詰める。

ドラム缶の奥行きは85㌢で前面の下側に火口(20㌢×10㌢)があり、後ろの下側に煙突の穴(10㌢×10㌢)が有ります。

上部に開口する炭材を入れる穴(30㌢×40㌢)から竹を詰ていきます。

底部には空気の流通の為に30㌢の鉄筋を6本敷き、その上に竹を前側と後ろ側の2列に寝かせて詰めます。

前面は壁面いっぱいに詰めてもかまいませんが後ろの煙突穴の周囲は煙が抜けるように5㌢位の隙間を作るのがコツです。

炭材は窯の天井迄詰められるだけ詰め込みます。竹の板ですからきちんと重ねすぎると空気の流れが悪くなることが有ります。

無作為に詰める事も必要です。ドラム缶1本に約70~80㌔入ります。竹にして約10本以上が必要です。

炭材の充填が終わったら、上部の開口部を金属の蓋で覆います。

(切削した時の切り板より縦横5㌢以上大きな鉄板を用意する。古いドラム缶を利用するか、20㍑の丸型石油缶をカットする。)

炭窯の上に10㌢以上の真砂土をかけます。これは火を入れた後、窯の温度を保つためと、隙間から酸素が入らない様にする為です。

 

4) 着火時の要領。

窯の火口の前で着火をしますが、焚き火の要領で火熾しをします。事前に細かく裂いた木又は竹を準備しますが、使用済の割り箸が最高です。これにキャンプの火熾しで使う着火剤が有れば楽に着火出来ます。段々に太い薪にしていきます。

着火時はただ燃やすだけでなく、火が窯の中を循環しなくてはいけないので、団扇で以て強制的に送風しますが、電源が許されるなら小さな扇風機を用意するとより効率的です。電気配線の無い処でも車輌が近くに入れば、バッテリーから交流コンバーターを使って扇風機を回します。小さい扇風機ならコンバーターで充分使用が可能です。(ホームセンターで300w程度なら入手できます。)

 

5) 着火後の処置

暫くは、ひたすら火勢を強めて炭窯に熱風を送り続けます。窯の温度が上がってこないと煙の循環が上手く出来ないからです。

特に冬場は炭材も冷えて居ますので手が抜けません。このためにも扇風機は必需品なのです。最初は真白い煙が出てきます。

しかし煙の温度は上がりません。この煙はほとんど水蒸気です。煙突から出る煙に手をかざして温度を確認して下さい。

着火後1時間くらいすると煙の温度は手をかざすと熱いと感じるようになります。ここで扇風機を撤去します。

此の時の煙突の温度は約80度でその後数時間(4~6間)継続します。

この間火を絶やさないように薪を補充しますが、目的は火口で薪を燃やす事により酸素を絶ち、熱風を窯に送り込み炭化を促進するためです。

窯の竹は燃えて炭になるわけでは有りません。

 

6) 竹酢を取る準備

炭窯の温度が上昇してくると竹に含まれている水分が化学変化を起し煙と一緒になって放出されます。煙を冷却したものが竹酢です。

炭焼工程では、着火1時間後煙の温度が80度に安定した時から採集に入ります。

4~5時間後、炭化が進み窯の温度が上昇して煙突の煙の温度が200度くらいになると、竹酢の採集量も減ってきてタール分が多くなってきます。この時期で採集を終了します。竹酢の主な成分は酢酸のようですが複雑な成分によって構成されいるようです。舐めると酸っぱい液体で、薪を焚くと切り口から液体が出てきますがそれは木酢で竹酢と同じような成分です。

 

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竹酢は炭焼きの煙の冷却に依って採集出来ます。集煙器など専用器具を使わなくても、L型の煙突を使えば採集できます。

煙突を通過する間に冷却された竹酢が煙突の下部に戻り、L型煙突の口から垂れたものを採集します。

冬場は冷却が進むため1窯で5~10㍑取れますが夏場は3~4㍑と少量になります。

竹酢の効用及び利用方法は多々ありますが、消臭作用が強く、生ごみの不快な臭いは一瞬に消えます。又、猫の禁忌剤に使われたり、園芸の虫除け剤にも利用されます。変わった利用では蚊に刺されたときの痒み止めに、塗るとてき面に効きます。

 

7) 炭焼き窯の煙の変化を観察

炭焼きの進行具合は煙の色の変化で窯の中の状況を掴むのがポイントです。

温度計で煙の温度は測れますが、煙の色で判断するのが一般的です。

私の使用している温度計は熱電対タイプで300度まで測れますが、2~3万円と高価なので無理に用意する事は有りません。

煙の色と手のひらで煙の感覚を覚える事が大切です。着火時から窯の締切まで10時間以上掛かりますが、実際の体験で覚えてい行くしかありません。

着火から締切まで火口で火を絶やさないように焚き続けますので薪の用意が必要です。

大量に燃やす必要は無く、火口から入る空気から酸素を奪って熱風を窯の中に入れ、蒸し焼きにすると思ってください。酸素が入ると炭材自らが燃えて灰になります。火を燃やし続ける作業は、長時間かかりますが、作業は単純で余裕がありますので他の作業と並行して行う事が可能です。時々煙の色をチェックします。煙の変化は炭材の乾燥具合や炭材の詰具合にによって毎回条件が異なり時間が読めません。

煙の変化

1.着火時 真っ白い水蒸気の多い煙 温度は80度以下で手のひらでも熱くない。  約1時間迄

2.手のひらを当てると熱く感じる。温度は80度を超え、此の温度が5~8時間以上続く。集煙器・煙突を付けて竹酢を採集する。

3.煙の量が減って来て色も灰色と薄くなる。採収する竹酢の中に黒いタール様の物が増えてくる。竹酢の量が減ってくる。煙の温度は200度を超え竹酢の採集を終了する。

4.煙は薄くなるがまだ水分の多い煙が続く。竹酢を終了して1時間くらいすると煙の色に青味が掛かってくる。煙が透け見えてくる。

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    火付け1時間後         火付け8時間後 

5.青色に変化してから1時間もすると、透明度が上がり煙突から30~50㌢透明になってくる。煙に手をかざすとネチャットする内は未だ内部は半生焼け状態。手の感覚がサラサラになって来たら出来上がり。

帰宅を優先して早く消火すると、生焼けの炭モドキが出来て、朝からの10時間の作業がふいになり後悔が残ります。

 

8) 窯の締切と消火・炭の窯出し

窯の締切とは酸素を絶つ事です。窯の構造から前の火口と後ろの煙突を締めれば良いだけですが、細心の注意が必要です。煉瓦が高温になっているので皮手袋を用意しましょう。特にアクリルの軍手は高温では溶けるので注意が必要です。火口の残り火を窯内に押し込み、煉瓦を噛まして真砂土を隙間なく掛けます。煙突には濡れ雑巾を被せ金属バケツで押さえます。

前も後ろも完全に密封出来たら作業は完了しホットする一瞬です。水を掛ける事はしないでください。

10分も経つと煙突は触れられるくらいに温度は下がります。そのまま自然に温度が下がるのを待ち、1日経てば窯も触れられるほどになります。1日後も熱いような場合は、どこか空気が漏れて消火できていないことが考えられます。2日も経つと炭も温度が下がり、取り出しが可能となります。蓋をあける時はドキドキものです。蓋を開けると前半分は3分の2くらいに下がっています。

後ろも4分の3くらいになっています。40㌢に切った炭材は30㌢近くに縮んでいます。丁寧に取り出し収穫籠等に収納します。

80㌔あった竹は15㌔くらいにスリムになりました。燃えたのではありませんから、窯の中には灰が全く残っていません。

6-3 ← 小川フィールド初代炭窯の窯出しの図

(平成16年) 出来た炭の量は篭4杯

平成24年2月の工程記録です

1)AM5時30分 到着 電源セット 火付け準備

2)  6時    着火 扇風機で送風

3)  7時30分 煙の温度上昇 竹酢煙突セット

4)PM15時30分 竹酢煙突撤去

5)  16時30分 煙に青味が入る

6)  17時10分 締切

7)  17時30分作業終了 到着から12時間。

 

6)16:30 煙に青味が入ってくる。煙の透明度がアップ。透けて見える。

7) 16:45 煙の水分が可なり減少。(サラサラ)

8) 17:10 締切決断。先ず煙突、続いて火口。

9) 17:30 作業終了。至」着時から12時間丁度。

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小川フィールド初代炭窯の窯出し風景(平成16年)
(未だ窯の前の小屋が有りません.)

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